ごめん、その0.01%が僕なんだ

0.1%が僕なんだ、ごめん

尺八を作り始めた頃にお世話になったO氏、彼のおかげで今僕はここに居る。彼には感謝しか無い。でも今は一緒にやっていない。

僕の作った尺八に値段をつけて売り歩いてくれた恩人、彼のおかげで僕の尺八は少しずつ人気になり、需要が高まった。

僕は常に性能にこだわり、納期を延ばすことが多かった。

工業生産畑の彼にとって納期は絶対、しかし、あと少しでもっと素晴らしい性能に出来るのに、ここでストップは出来ない・・・そんなやりとりをしていたある日のこと

「そんなに一生懸命作ったって、尺八吹きの99.99%は素人でっせ、誰も解りゃしませんよ」

この言葉である決心をしなければならなかった。

「ごめんなさい、その0.01%は僕なんだ、その僕が解ってしまうからやらなければならないんだ」

これは今でも変わらない、僕は制作者ではあるけれど、演奏家、ユーザーなんだ。

僕が気がついていることを修正したり、改善しなければ少なくとも僕は吹けないし吹かない。

そんな楽器を作ったって僕は買わない、だから人にも売りたくない。

しかし、いつも気になっていることはある。

どうしても竹の性質や太さの違いで、若干の性能差があることだ。

実は自分が使っている楽器よりも遙かに良いものは過去に何本も作ってきた。

しかし、必ずそれは見抜かれてしまい、手元には残らない。

自分は常に最高のものを吹いていたい、だから作っているのだが、製造販売の苦しいところで、常に最高のものをもてる訳では無い。

余談だが、今使っている楽器はものすごく堅くて良い材質だったのだが、根っこの格好がもの凄く悪くて、誰も買わなかったものだ。

その根っこを削って樹脂で成形してすっきりさせたいわゆる「ボーズ(坊主)」なのだが、ずーっと使っているうちに、それがカッコいいと思う人が増えて、今はわざと坊主にすることが良くある・・・・

と言うことで、今使っている楽器は常に最高になるように微調整はしている、でも最初から一発で漆を削り出したものにはかなわない。

こんな事情から、竹より堅い金属で、そして人間の手よりも正確なCNC旋盤による尺八を20年前から設計していた。

デザインも頭の中では出来ていた。

スティーブ・ジョブズが「なめ回したくなるような」と言って世に送り出したiPhone

自分で世に出すものはそんな気持ちになるものだ、幾ら見ていても、触りまくっても飽きないデザイン・・・・少なくとも僕はこのAireedX 331Dは大好きだ。

しかしここまで来るのに20年も掛かってしまった。

まず旋盤で尺八の内径を削れないことが解った、内径が細く、削るバイトという刃物がたわんでしまい、深くは削れないのだ。

しかもこのデザインが、また大変な問題を生み出していた。

旋盤で削るために挟むことが出来ないのだ、特殊な工具が必要で、そこから作らなければならない。

しかも、最終的なアルマイト処理も裏側というような見えないところが無く、電極をつけるところが無い、電極をつけるところは色が乗らない。

そして最大の難関が内径と独特の形状をした歌口を結合することだ。これこそ手作業だから出来たもので、それを機械で完璧にやらせることは出来ないのだ。

これらを一つひとつ根気よく解決するのに知らないうちに20年の歳月が過ぎ去っていた。

3Dプリンタの登場

3Dプリンタの登場で計画は加速した。

3Dプリンタなら、不可能と言われていたところもキャドで書くことさえ出来れば出力できるのだ。

どうにか設計図が完成し、3Dプリンタで出力したその作品が驚くような性能を発揮した。

これはどうしても金属でやらなければならない、そんな「気」「オーラ」が発散していたように思う。

その気迫が狛江の老練な旋盤職人に伝わり、彼の技術力で出来ないと言われたところが出来るようになり、デザインも3Dプリンタで確認しつつ、様々な困難を克服してこのAireedX 331Dは完成した。

割れない唯一の尺八、世界中の誰もが最高を安心して手に入れられる、全く同じ楽器によるアンサンブルが可能になり、そして何よりも

持っているだけでカッコいい楽器、こんな楽器そのものが久々では無いだろうか。

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